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編み物という文化を伝承していくこと

by Yarnaholic

編み物という文化を伝承していくということ

なんだかとても大袈裟なタイトルになってしまったのですが、私が今の仕事をしている大きな理由2つのうちのひとつがこれなのです。

(もう一つの理由はまた後日まとめたいと思います。)

日本の編み物業界は、手芸というジャンルの中でも斜陽化の一途を辿っていると思われます。編み物人口の減少や高齢化に伴い、この業界に携わっている会社や人たちは、どこも厳しい経営や運営を余儀なくされている状況です。

その一方で、「編み物」という大きな括りの中でどんどん細分化が進んでおり、ニッターの好みやニーズに合わせて独自の進化を遂げているのは日本らしいな、と嬉しく思います。

編み物を始めたきっかけはなんですか?

私が知り合ったニッターさんに必ずと言っていいほど投げかける質問が「編み物を始めたきっかけはなんですか?」「誰に教わりましたか?」です。

「興味があったので本やネットで独学して今に至ります」

「大人になってからお金を払ってお教室に通いました」

という答えが返ってくることもあるのですが、

「母親や祖母が趣味で編み物をやっていて、幼い頃からそういう環境にいたので自然と教わりながら慣れ親しんできました」

という答えが圧倒的に多いです。

私自身も、母が趣味で編み物をしていて(おそらく近所に先生がいらっしゃって習ったりもしていたんだと思う)、近所に住むおばさま達も編み物が好きな方が多くて、よく私の家にみんなが集まってお茶を飲みながら編んで、おしゃべりを楽しんでいる、という環境がすぐそばにありました。

おばさま達が編んでいるものは幼い私にはとても興味深く、リズミカルな手先の動きに目を奪われ、編み出される模様に魅了され、いつしか「私も編んでみたい!」と懇願していました。

私が初めてかぎ針を持ったのは、小学校低学年の頃で、長編みを繰り返して作るピンクのマフラーを完成させました。

正直それは今考えるとファッション的にはどうなの?という拙い代物で、使用した記憶はほとんどなく…

でも、とにかく、母に連れられて行った手芸屋さんで糸を選ぶのが楽しくて嬉しくて、一心不乱に編んだ事だけははっきりと覚えています。

これが私の「編み物原体験」であり、その後ブランクを経て、結婚してから編み物を再開し、毛糸のオンラインショップを開業するということの大きな基礎になっている気がします。

ずっと遠ざかっていた編み物を大人になってからまた再開しようと思ったのも、幼い頃に編み物が楽しかったという記憶が残っていたからですし、自分の好きな糸を集めてニッターさんに提供したい、毛糸を選ぶ楽しさを共有したいと思ったのも、幼い頃に通った手芸屋さんでのワクワク感が心の奥底にしっかりと根付いていたからです。

幼い頃の経験や環境って改めて尊いものだと思いましたし、お金には代えられない貴重なものだな、と。

もちろん、編み物に限った話ではなく。

「編み物」は始めるのにハードルの高い趣味だと思う

こんなこと改めて声高に言う必要ないのはわかっているんだけど、正直事実だと思っているので…

若い人達に「編み物始めてみませんか?」とお誘いしても「イエス」の答えが返ってくる確率が低いのは、

・難しい

・慣れるまでに時間がかかる

・サクッと作品が仕上がらない(完成までに時間がかかる)

・仕上がっても出来栄えに満足できない(上手に編めるようになるまである程度練習が必要)

・最初に揃えるお道具にお金がかかる

・材料費も安くない

みたいな要因があるからかと。

ハマる人はハマるけど、超えるハードルが結構高くて、相当の情熱と興味と勢いと持久力がないと、こちら側には来ていただけないのが現実だなあ、と思っているのです。

だからこそ、たくさんの編み物に関わる方達が、草の根的に普及活動をしていらっしゃいます。

体験教室や、すぐに編めるキットの販売を通して、編み物に興味のある人達を少しでも掬い上げようと努力を続けていらっしゃる。尊敬しかありません。

私も、どうすれば「ちょっと編み物やってみたいな」という小さく芽生えた興味を潰さずに育てていけるか、についてずっと考えているのですが、なかなか明確な有効的な結論には至っていません。

私に今できることは、

・編んでみたいと思ってもらえる毛糸を提供すること。

・使ってみたいと思えるお道具をご紹介すること。

・編んでみたいと思ってもらえる素敵なデザインのパターンをご紹介すること。

・「編み物がある生活っていいな、楽しそうだな」と思ってもらえるコンテンツを発信していくこと。

かな、と思って仕事をしています。

これはどの分野でも言われていることですが、編んでみたい気持ちを一過性のブームや流行にしないためにも、生活に根ざした文化にしていかないといけないんだろうなあ、というのは強く感じています。

私が幼い頃には身近にあった「編み物のある生活」が今はどんどん廃れていっています。

既成の素敵なお洋服やニットが安価で手に入る時代に、ソーイングや編み物はお金と時間のかかる贅沢な趣味と化しました。

だからこそ、私は価値があるとも考えています。ニッチになればニッチになるほど。

制作した作品自体にも、もちろん価値がありますが、「編み物をする」という行為自体に価値があると思っています。

(矛盾するようですが、どんなに編み物人口が減っていっても、手仕事が絶命することはないとも思っています。)

「価値があるから編み物をしている」という人なんかいなくて、みんな純粋に「好きだから、楽しいから」編み物をしているですけど。

「好きだから、楽しいから」という気持ちで編み物を始めてくれる若い人や子供達が増えたら嬉しいなあ。

親から子供・孫へ、大人たちから子供たちへ、編み物の技術と習慣が受け継がれていくことを切に願いながら、今日もお仕事頑張ります。

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